2014/05/24

物語をみる『クイーンクリサリスの帰還 Part4』

 原題『MLP:FiM -The Return of Queen Chrysalis- Part4』
 邦題 公式の邦題はナシ
これの感想と紹介について記す

書籍の表紙



Part3→http://kansomolashi.blogspot.jp/2014/05/part3.html

MLP:FiMを知っており、前回の記事を読んだことを前提に記します。



本題
今作もいよいよ終盤に突入、Part4です。仲直りをしたmane6は、ついにCCが潜む土地に辿り着きました。子猫の町は緑の粘液に覆われて、面影をかすかに残すばかり。その先にそびえたつ城がいかにもといった風情を出しています。

城に近づくと、扉が勝手に開き、中に入ってみると奇妙な空間が広がっているではありませんか。これはエッシャーのだまし絵を真似たものですね。映画やアニメを問わずよく見かけられますが、FiMの画風で見ることができるとは貴重の一言。

城の中はエッシャー風

元ネタ:あらゆる方向にのびる建物が奇妙

奇妙な空間はたくさんの部屋に繋がっていましたが、どれがCCの居場所へ繋がっているのかは分かりません。そこでmane6は別れて片っ端から部屋を確かめていくんですが、そこで様々な怪物に出会います。

この怪物たちには元ネタがあります。では調べてみましょう。

1.呪術師ポニー
 元ネタ:映画『インディージョーンズ/魔宮の伝説』のモラ・ラム

右:呪術師ポニー 
右手のリンゴは心臓のかわりか

被っているドクロ兜がほぼ同じ
右手に心臓をつかんでいる


2.ピエロポニー
 元ネタ:アメリカの殺人鬼『ジョン・ゲイシー』か?

中央:ピエロポニー 

危険なピエロといえばジョン・ゲイシー

3.双子ポニー
 元ネタ:映画『シャイニング』の双子姉妹

中央:双子ポニー

双子の服装、髪型、ポーズともに一致
部屋の内装も

4.怪人ポニー
 元ネタ:『オペラ座の怪人』の怪人

マスクを手にする怪人ポニー

映画『オペラ座の怪人』(1925年版)の怪人
人相が似ている

様々な扉の中から、TWが奇妙な扉を見つけます。その扉は喋るんですね。なぞなぞを投げかけてmane6を悩ませてきますが、PPがあっさり解決してしまいます。ではなぞなぞとは、どんな内容なのか。原文+翻訳文でお届けしましょう。

扉"How is a pegasus like a writing desk...can you answer this riddle?"
 『ペガサスと勉強机のそっくりなところは……なーんだ?』

この文章「どこかで聞き覚えがあるなあ」と気付いた人がいるのではないでしょうか。そしてその人なら、PPと同じくして答えが分かったでしょう。PPはこう答えました。

PP"Nope! I cant answer it!"
 『さあね! わかんないわ!』

「分からない」これが答えです。

「え、どういう意味? どういうひねり?」と混乱する人はいるでしょうが、ご安心ください。このなぞなぞには意味もひねりも存在しません。答えのない無意味な質問なんです。だから「分からない」「答えはない」が正解なんです。

これには元ネタがあります。『不思議の国のアリス』において、アリスが帽子屋から受けたなぞなぞです。では元ネタのなぞなぞがどんな文章なのか、見てみましょう。

帽子屋"Why is a raven like a writing desk?"
   『カラスと勉強机がそっくりなのはなぜ?』
アリス"I haven't the slightest idea."
   『さっぱりわからないわ』

(実はこのなぞなぞと答えには、アリス原作者のルイス・キャロルがファンのために、「なぜ分からないが答えなのか」きちんと理由を付けてもいます。気になる人は調べてみてください)

というわけで先へ進むことができたmane6は、ようやくCCとご対面。捕まっているCMCとも再開。いざ戦いになると、CCは魔法をつかってTW以外のメンバーをマユに閉じ込めてしまいます。一騎打ちになるかと思われたところ、TWは尋常ならざる力を発揮します。思わず自分自身で戸惑ってしまうほどの。

なぜ凄まじい力を発揮したのかCCが説明をしてくれます。それはいま空をいくセクレタリアト彗星が関係しているんですね。この時の彗星は馬頭星雲と重なる軌道で、エクエストリア上空をも通過する。日食や月食のような、珍しい天体現象が起きている。

これによってエクエストリアに住む魔法生物たちは影響を受け、魔法の力が各段に強くなる。それはTWのようなユニコーンや、CCであっても例外ではありません。特に、ユニコーンとして優秀なTWは、なおさら影響を受けてしまっているわけです。

これがCCの狙い。CCは凄まじい魔力を得たTWを、味方につけようとするんです。

CMCを誘拐したのはTW含むmane6を誘いだすため。メンバーを捕まえたのは、メンバーを引き換えにTWをこちらへ引き込むため。Part2―Part3で仲間割れをさせ、再び仲直りさせたのは、友情を強固に固めさせることが目的だった。TWにメンバーの存在意義を強めさせれば、それだけ手籠にしやすくなるわけです。

CCがTWを狙っていた様子は、Part1の頃から強く表れていました。なにせ彼女はことあるごとに「トワイライトちゃん、トワイライトちゃん」と呟いていましたから。

そんな風にぞっこんになるのも無理からぬことです。アニメでCCの侵略作戦が失敗した原因の一つが、TWでしたから。アニメではTWを追い払おうとしていたCCですが、今作では一転、TWを手に入れようとする。なかなか面白い構図ではありませんか。

さてTWは、一度はメンバーのために我が身を捧げようとしました。しかしCCが約束を破ってメンバーを解放しなかったので、さすがに怒り、戦いを挑むことになるんです。TW vs CCは、迫力のある絵を見ることができます。

天体現象によるパワーアップと、メンバーを守りたい気持ちに満ち溢れたTWは予想以上に強くなっており、CCはそれによって負けてしまいます。CMCも救いだし、セレスティア率いるロイヤルガード隊も到着し、めでたしめでたし。

CCはどうなったかというと、城の奥深くに閉じ込められてしまいます。PPが用意した着ぐるみが、門番として立ちはだかります。中身も入っていないのに言葉を発して、チェンジリング兵になぞなぞを問いかけ続ける。

なぞなぞに永遠と答えさせることで閉じ込めているんでしょうか? なんだかよく分からない閉じ込め方ですが「チャンチャン!」といった終わり方が微笑ましいですね。

ところで、最後のTW vs CCですが、絵の力強さも相まってかなりの迫力に感じられますね。はじめて読んだとき、私はこれだけでもずんぶんオーバーだなあと思ったものです。まさか後々、アニメがこの迫力を上回る戦いをすることになるとは……(詳細はS4を参照のこと)。

CC、TWともに凄まじい顔
両者の力強さ・勢いの感じられる構図も見事



結論

物語を眺めていくと、アニメにおける教育番組的な要素は薄めですね。そしてアニメでは実現しないIFを表現していくスタイル、勢いのある画風も相まって、大きなお兄さん向けの印象が強い作品でした。

特に今作は、アニメに一度だけ登場したヴィランのCCが、かなり活躍してくれています。彼女を楽しむための作品といっても過言ではありません。FiMファンで、CCが好きな人は、今作を一読してみれば幸せになれますよ。

(CC×TWの妄想を大いに奮い立たせる作品でもあるので、不純な気持ちをもっている人にもオススメです)

もちろん、CCには興味ないとか、FiMを知らないとか、そんな人でも楽しめます。物語は単純明快ですし、絵はしっかりしていて見ごたえがある。一番のハードルは全編英語であることでしょうか。しかし、些細な問題と言いきってよいです。

ではさようなら。

Part1―Part3のリンク
Part1:http://kansomolashi.blogspot.jp/2014/05/part1.html
Part2:http://kansomolashi.blogspot.jp/2014/05/part2.html#more
Part3:http://kansomolashi.blogspot.jp/2014/05/part3.html
Part4:ココ

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