2014/05/23

物語をみる『クイーンクリサリスの帰還 Part3』

 原題『MLP:FiM -The Return of Queen Chrysalis- Part3』
 邦題 公式の邦題はナシ
これの感想と紹介について記す

書籍の表紙



Part2→http://kansomolashi.blogspot.jp/2014/05/part2.html#more

MLP:FiMを知っており、前回の記事を読んだことを前提に記します。



本題
Part2で仲間割れをしたmane6、Part3の冒頭ではスパイク君がじきじきにそのおさらいをしてくれます。さらに、どうやってCCが復活したのかについても。Part1以来で登場がなくなったスパイク君ですが、こういう形で読者の前に出てきてくれました。

スパイクの解説は、Part3の最初と最後を飾っています。物語を綴じる役割をしているため、Part3全編、スパイクが我々にむけて語ってくれた物語であると言えます。もしかしたら『クイーンクリサリスの帰還』全編が……?

次いきましょ。

アニメにおいて、魔法によって吹き飛ばされたCC率いるチェンジリング兵。スパイクが、その直後の出来事を伝えていきます。CCたちが吹き飛ばされて辿り着いた先は、かわいらしい子猫たちが暮らす町でした。空から突然やってきた不気味な異邦人たちにさえ、愛情たっぷりに抱きついてくるたまらないヤツらです。

 S2E26におけるCC撃退シーン

スパイクの回想は同じ構図

しかしCCは所詮ヴィラン。子猫が愛情たっぷり……それはつまりチェンジリング族にとって恰好の餌です。疲労した部下を養うために利用します。子猫の町はたちまち支配され、家々は焼かれ、チェンジリング族の粘液で巣が作られてしまいました。

CCはここを新たな拠点にするんですが、彼女が住まう城が出てくるんです。これがちょっと謎で、コマ絵を見る限り、初めから建っていた城のようです。けど子猫がわざわざそんな物々しい建物を作るか? CCが一夜で建てた可能性も捨てきれません。

子猫の町を崩壊させたCCは眉をよせたくなるゲスさですね。歓迎ムードの子猫をためらいなく食料にする。一方でそのためらいなさは、部下を思いやる気持ちの表れでもあるように感じられます。よいキャラですよ。

いちおう回想は終わり、時間は現在のCCへ。CCはmane6の動向を観察し、CMCとのちょっとしたコントを交えながら、場面ごとに感想を挟んでいきます。スパイクの解説を無視してみれば、Part3はCCからの視点で動いていくように見えるでしょう。

スパイクとかCCとか、なぜ主役以外が中心なのか。それは分裂しているmane6全てを映すための、第三者視点が必要だから。それに主役以外の動向を受け手に示すことができるし、ちょうどよいですね。

さて、分裂したmane6[TW×FS、AJ×RT、PP×RD]はどう動いたのか、一つずつ見ていきましょう。舞台は大きくわけて[分裂後の夜、翌日]2つに分けられています。

TW×FS
分裂後の夜、2人は焚火を囲んで話しあっています。TWはまだ仲間割れを根にもっていますが、FSは仲直りをするべきだと、半ばTWを叱るように話します。TWも「たしかに喧嘩は大人げなかった」と心を改めることになるんですね。

翌日の2人は、うまくいけば道中で仲間と再開できることを信じて、目的地へと歩を急ぎます。ところが途中で大きな縦穴に落下してしまい、転がり回ってタテガミや尾が乱れほうだい、枝葉がつきほうだいに。

TWは縦穴のことを"Oubliette"と言います。これは中世頃に作られた地下牢獄の一種。実際、作中では縦穴は壁面がレンガ作りで、人工物として描かれている。誰が何の目的でこんな場所に作ったのやら。

そこから脱出できた2人でしたが、目の前にチュパカブラが現れます。しかしTWは動じずにウンチク語り「チュパカブラはヤギしか襲わない」。ところがよく見ると2人はタテガミに枝がついて、まるでヤギのような姿でした。追いかけ回されてしまいます。

チュパカブラとはUMAの一種で、現実では南米での目撃情報が盛んです。ヤギを襲うというより、家畜全般を襲うようです。一時期は日本でも、オカルト特番で引っ張りダコのUMAネタだったため、名前を覚えている人は多いと思います。

チュパカブラのイメージ

作中に出てくるチュパカブラ

AJ×RT
分裂後の夜、RTがAJにむかって「こんな森の中でも行儀よくやりましょ」と言ってきます。アニメを見た方なら分かるかと思いますがS1E8を彷彿とさせるではありませんか。とはいえここでのAJは反発はせず、呆れ顔でRTに付き合ってあげます。

翌日には森から抜け出ようとする2人でしたが、そこらに生えている巨大な花がRTの目を奪っていきます。ところが花は他の生物を食らう凶暴な植物でした。食馬植物とでも言いましょうか。2人は川に逃げ出しますが、花は執拗に追ってきます。

最後には川から滝へと転落しそうになるんですが、2人は花を捕まえてパラシュートとして使ってみせる。これで危機を乗り越えるんですね。ここら辺、2人で皮肉を言いあうのが面白い。

この食馬植物ですが、作中ではペチュニアだとかカーネーションだとか言われて、動物に詳しいFSはヴァンパイアック[Vampiric]と呼びました。Vampiricは女性の吸血鬼。花は女性のイメージ、そして目の前にいる花は血肉を食らうものだから、この名で呼んだのでしょう。

PP×RD
分裂後の夜、RDは焚火を起こしたいようですが、起こし方が分かりませんでした。PPにトンデモない方法を教えられて、疑りながらも他の方法を知らないから実行してしまう情けなさ……このコンビはとてもよいですね。
※訂正※
分裂後の夜、RDは焚火を起こしたいようですが、起こし方が分かりませんでした。ウマのひづめでは火を起こすための枝を支えきれない。そのことをピンキーに愚痴り、ピンキーは律儀に答え……このコンビはとてもよいですね。

Part2―Part3にわたってのPP×RDコンビは、かなり好み。RDがツッコミ役でPPがボケ役ですから、ハマりがよい。それに肝心な時に弱気になりがちなRDに対して、いつでも場を動かしてみせるPPがついているのは、とても頼もしいことです。

PPはここで歌を歌おうとするんですが、RDに止められます。アニメだったら、確実に歌っていたことでしょう。RDが歌を止めた理由は「騒ぐとチェンジリング兵に見つかる」から。そこでPPはチェンジリング兵を欺く方法を提案します。

PP、RDそれぞれを象った巨大なキグルミを持ち出すんですね。「どこから持ってきたんだよ!」とRDがツッコミを入れるほど、唐突な登場です。そして被らされる。どうやらキグルミを着たまま一夜を過ごしたみたいです。

翌日になって平野を進む2人は、かわいいウサギの群れに出会います。ところがウサギなのに角が生えている。奇妙だと思っていると、実は凶暴な動物で、2人は逃げ回るハメになるんですね。角の生えたウサギと聞いてピンと来た人は、きっとUMAマニア・オカルトマニアに違いありません。

角の生えたウサギはジャッカロープという名のUMAです。アメリカのワイオミング州で目撃情報があり、おとぎ話みたいな雰囲気がありますね。信憑性のかなり低い、都市伝説の域を出ていないUMAです。

ジャッカロープのイメージ 

作中に出てくるジャッカロープ

mane6再集合
ジャッカロープから逃げるPP×RDは、空中から降りてきたAJ×RTと再開します。そして崖っぷちまできたところで、チュパカブラから逃げていたTW×FSとも再開。出会い頭にぶつかって、団子になって崖をまっさかさまに落ちていき、辛くも怪獣たちとの追いかけっこが終わりました。

ここでmane6は仲直りをします。もちろんこれまでの動向を、CCはすべて知っています。仲直りしちゃって悔しがっているのかな? と思いきや、しめしめといった様子。彼女はTWに何か期待しているようですが、果たして……?

今回、分裂したmane6の動きを、組ごとにまとめた形で話しました。ただし作中での物語の並び順は違っています。知りたい人は読んでみましょう。



Part3は終わり。

Part4→http://kansomolashi.blogspot.jp/2014/05/part4.html

0 件のコメント:

コメントを投稿