苦痛
恐怖
悪夢
SILENT HILL
SILENT HILL
というわけでサイレントヒルの記事を3つにわけて届けていきます。まずはPart1で、源流たるゲームシリーズ"Silent Hill"(以降SHと呼ぶ)を記していきましょう。
SILENT HILL
1999年、SONYの放ったプレイステーションが覇権を握っていた時代。様々な3Dゲームが登場し、今作はそんな中で世に放たれました。伝説の幕開けです。
3D三人称視点。ホラーアドベンチャーと呼ばれるジャンルで、有名なものにアローン・イン・ザ・ダーク、バイオハザードが挙げられます。
特にバイオハザードは、同ジャンルを日本人に浸透させるきっかけとなりました。みなさんよくご存じでしょう。
特にバイオハザードは、同ジャンルを日本人に浸透させるきっかけとなりました。みなさんよくご存じでしょう。
バイオハザードの発売日が1996年、SHの発売日が1999年、後発ですね。さらにホラーアドベンチャーというジャンル被りによって「SHはバイハザードのパクリ」と思われていた時期がありました。
実際に両作品をプレイした方なら、ゲームの違いが一目瞭然なはず。ではSHの特質を挙げてみましょう。初代は全ての基本であるため、説明を長めでお送りします。
ホラー観
身の毛のよだつ世界
ゲームを始めれば霧深くひと気のない街に放り出されます。進めていくと街の様子は一変、暗くて鉄に覆われた世界(通称:裏世界)へ。そんな街を徘徊しているのは正体不明のクリーチャー。
恐怖はジェイソンのように突然現れて鉈を振り回してはくれません。SHの恐怖は静かにやってきて、去ることなく受け手にまとわりついて離れません。霧に閉ざされた街はひたすら不安を煽り、悪意の塊のような裏世界は嫌悪・不潔感を与えてきます。
特に裏世界は凄まじい。コンセプトは「血と錆び」悪意に満ちています。床壁建物、あらゆるものが非現実的で、人を怖がらせるだけのための作りをしています。見た目の汚らわしさ、異常さは、2014年の今なお他ゲーの追随を許しません。
特に裏世界は凄まじい。コンセプトは「血と錆び」悪意に満ちています。床壁建物、あらゆるものが非現実的で、人を怖がらせるだけのための作りをしています。見た目の汚らわしさ、異常さは、2014年の今なお他ゲーの追随を許しません。
またクリーチャーはゾンビのように単純明快ではありません。SHのクリーチャーは形こそ様々ですが「なぜそんな姿で、そこにいて、襲ってくるのか」ゲーム中では分かりません(設定はある)。その不明で理不尽な感じが恐怖を呼びます。
この恐怖は説明しづらい。例えばあなたが暗い夜道で、電柱の裏に人影を見つける。たぶん人影だと思うけど分からない。近づけば襲ってきそう。逃げたら追いかけてきそう。……そんな状態を想像してください。それがSHのクリーチャーです。
演出の面では、個人的には音楽に要注目、あろうことかノイズミュージック。鉄のこすれる音、うねる音、工事音や機械音からサンプリングされた無機質な音楽は、もはや音楽と呼べるのかどうかすら怪しいですね。
さらに根元のストーリーも恐怖に大きく関わってきます。
ストーリー
ゲーム自体のあらすじは至って簡素です。
主人公ハリー・メイソンは養女シェリル・メイソンを連れて観光地SHへ赴くも、事故に会って娘シェリルと離れ離れになる。ハリーは街で娘を探すうちに怪異に巻き込まれていく……という具合。
しかし、ゲームを進めるにつれ判明していく本筋は複雑です。
大雑把に言うと、田舎の土着的な宗教が絡んだ呪術魔術が関わってくる。そのため荒唐無稽とも言える設定・展開が待ち構える。例えば街をむしばむ世界の正体は、アレッサという女性の悪夢が具現化したものなんですね。
なぜ悪夢が具現化したのか、なぜアレッサは悪夢を見るのか。これもまた陰湿かつ邪悪なストーリーで、知れば気が滅入ること請け合い。とはいえそういった心を抉るストーリーが、恐怖を盛り上げてもいます。
ゾンビや殺人鬼のような現実感からは遠く、かといって幽霊や宇宙人などとは性質が異なる。この感触はSHならでは。
プレイ感
今作がホラーアドベンチャーであることはもう言いましたね。内容はアドベンチャーということで、キャラを操作しながら探索・戦闘を行い、ストーリーを追いかけていくことになります。
操作は曲者で、初期アドベンチャーゲームではおなじみ、いわゆるラジコン操作と呼ばれるものです。直感的でない、慣れないとキャラを歩かせることすらままならない。その不自由さがホラーな雰囲気と相まって、怖い怖い。
私も昔、今作を遊んだときは操作に不慣れで……というか嫌いでした。うまく操作できないので探索はおろか戦闘も逃亡もこなせない。殺される恐怖に苦しめられました。
ただ操作感からくる恐怖は諸刃の刃です。人によっては不自由な操作は苛立つだけ「ゲームの難しさは操作感で決まるべきではない」とは誰が言ったか。現在のゲームでラジコン操作が廃れたのは、そういうことでしょうね。
話は変わって探索部分。SHはタイトルの通りSHという街が舞台です。街は広く至る所にアイテムが置かれ、真っすぐ歩くだけでは目的地につけない。歩き回らされる作りは「マラソンゲー」と揶揄されるほど。
これも諸刃の刃ですね。歩き回ることで街の異質な雰囲気にどっぷり浸ることができます。しかし早解きを求めるプレイヤー、そもそも雰囲気に興味がないプレイヤーには、街の冗長さは苦痛でしょう。
戦闘は簡素。主人公ができることは銃を撃ち、武器で殴るだけ。動きは単純で迫力なんてありません。ところがホラーを楽しむにあたってはこの程度で充分なんですね。
まとめ
ストーリー・雰囲気・簡素なプレイ感、これらは初代の時点で出来上がっていました。特に雰囲気はシリーズが重ねられても変わらず、恐怖の芯であり続けています。
2001年、プラットフォームをプレイステーション2に移して続編が出されました。今作でも舞台はSHの街ですが、登場人物はガラリと変化しています。
初代SHが終わってなお街をむしばむ悪夢。これは街自体が呪われて、そういう不思議な場所になってしまったからですね。つまりこれからは初代SHの話がなくても悪夢を展開することができる。実際、SH2に前作との繋がりはありません。
今作の特徴は重厚なストーリー。罪と罰、トラウマやコンプレックス、これらを抱くキャラがそれぞれに動き絡み合っていく。ストーリーをすぐに理解するのは難しいですが、その分の陶酔感があります。
ゲーム面ではSHの街並みがより緻密になりました。街一つを再現しかねない勢いです。没入しやすい一方でマラソンゲーを加速させてもいます。序盤からとにかく歩き回らなければならない。
グラフィックは前作のような容赦ない嫌悪・不潔感がマイルドに。音楽もノイズミュージックではなくなり、メロディアスなものが目立ちます。そうした音楽が、重厚なストーリーを盛り上げていきます。
さらに特徴として、レッド・ピラミッドシングと呼ばれるクリ―チャーが登場。見た目、行動ともに非常にインパクトが強かったため大人気に。血まみれのナースと合わせて、以降SHの看板として扱われていきました。
初代SHの時点でストーリーを重視する向きがありましたが、SH2でその路線が明確になったように思われます。物語としてのSHがさらなる広がりをみせるわけです。
2003年にプレイステーション2で発売。SH2で一度は無関係のストーリーが展開されるも、今作で再び初代SHの流れに戻ります。そのためゲーム全体に初代SHで見られた嫌悪・不潔感が復活していますね。
今作は初代SHのキーパーソンであるシェリルが成長し、名前を変えたヘザーが主人公(厳密には成長ではない)。若い女の子が主人公のホラーアドベンチャー。もうこれだけで今作の価値の高さがお分かりいただけるでしょう。
大抵のホラーアドベンチャーは、何かを調べたときどんな文章が表示されるか? 「鍵がかかっているようだ」「何かをはめる穴が空いている」「血だ・・・」という風に、簡素な独白文です。
今作は年頃のヘザー視点なので「鍵がかかっている。さいあく・・・」「何かをはめる穴が空いている。へんな形」「血だ・・・気持ち悪い」という感じの独白文を味わうことができます。軽かったり、一言多かったり。
プレイ感では、過去作より複雑なマップが増えてマラソン感が薄れました。そして裏世界の不気味さはシリーズ随一でしょう。血と錆びのコンセプトを忠実に表現して、一部のステージは真っ赤っ赤だわ床壁が蠢いているわ。
初代SHにケリをつけたので、今作でひとまずシリーズの区切りがついたと言えます。ですがSHの街が滅んだわけではありません。
以降のタイトル
SHシリーズは以降もタイトルを重ねます。
4作目"SILENT HILL 4 THE ROOM"
5作目"SILENT HILL ZERO"
6作目"SILENT HILL:HOMECOMING"
7作目"SILENT HILL -SHATTERED MEMORIES-"
8作目"SILENT HILL: DOWNPOUR"
9作目"SILENT HILL: BOOK OF MEMORIES"
システムを大幅に変えたり、リメイクを行ったり、あの手この手。しかし努力の甲斐はむなしく人気にかげりが見えてきます。少なくとも日本のゲームシーンで、名前が大々的に扱われることはなくなりました。
ただアメリカでは人気が根強い。5作目から海外市場を中心に据えられた点からもうかがえます。なんとコミカライズもシリーズを重ねているとか。日本発のゲームが気がつけばアメリカに籍を置いていた……喜べばよいのか嘆けばよいのか。
私はアメリカで人気が続いているのも納得できます。ホラー・スプラッタ作品には目がない国ですからね。ある意味では収まるべきところに収まったと言えるのでは?
結論
SHはその世界観が斬新なホラーゲームです。人を怖がらせる点で容赦や情緒はありません。なんといっても、設定からして悪意に満ちているものだから、容赦がなくて当然でしょう。
強烈なホラーがコアなファンを育みSHはさらなる発展を見せていきます。というのも映画が作られているんですね。Part1はここで終了しますが、次パートから映画版SHに触れていきましょう。
ではさようなら。
[Part2 映画版SH]
http://kansomolashi.blogspot.jp/2014/07/part2.html
[Part3 映画版SH2作目]
http://kansomolashi.blogspot.jp/2014/07/part3.html
演出の面では、個人的には音楽に要注目、あろうことかノイズミュージック。鉄のこすれる音、うねる音、工事音や機械音からサンプリングされた無機質な音楽は、もはや音楽と呼べるのかどうかすら怪しいですね。
さらに根元のストーリーも恐怖に大きく関わってきます。
ストーリー
ゲーム自体のあらすじは至って簡素です。
主人公ハリー・メイソンは養女シェリル・メイソンを連れて観光地SHへ赴くも、事故に会って娘シェリルと離れ離れになる。ハリーは街で娘を探すうちに怪異に巻き込まれていく……という具合。
主人公 ハリー・メイソン
主人公の娘 シェリル・メイソン
しかし、ゲームを進めるにつれ判明していく本筋は複雑です。
大雑把に言うと、田舎の土着的な宗教が絡んだ呪術魔術が関わってくる。そのため荒唐無稽とも言える設定・展開が待ち構える。例えば街をむしばむ世界の正体は、アレッサという女性の悪夢が具現化したものなんですね。
なぜ悪夢が具現化したのか、なぜアレッサは悪夢を見るのか。これもまた陰湿かつ邪悪なストーリーで、知れば気が滅入ること請け合い。とはいえそういった心を抉るストーリーが、恐怖を盛り上げてもいます。
ゾンビや殺人鬼のような現実感からは遠く、かといって幽霊や宇宙人などとは性質が異なる。この感触はSHならでは。
プレイ感
今作がホラーアドベンチャーであることはもう言いましたね。内容はアドベンチャーということで、キャラを操作しながら探索・戦闘を行い、ストーリーを追いかけていくことになります。
操作は曲者で、初期アドベンチャーゲームではおなじみ、いわゆるラジコン操作と呼ばれるものです。直感的でない、慣れないとキャラを歩かせることすらままならない。その不自由さがホラーな雰囲気と相まって、怖い怖い。
私も昔、今作を遊んだときは操作に不慣れで……というか嫌いでした。うまく操作できないので探索はおろか戦闘も逃亡もこなせない。殺される恐怖に苦しめられました。
ただ操作感からくる恐怖は諸刃の刃です。人によっては不自由な操作は苛立つだけ「ゲームの難しさは操作感で決まるべきではない」とは誰が言ったか。現在のゲームでラジコン操作が廃れたのは、そういうことでしょうね。
話は変わって探索部分。SHはタイトルの通りSHという街が舞台です。街は広く至る所にアイテムが置かれ、真っすぐ歩くだけでは目的地につけない。歩き回らされる作りは「マラソンゲー」と揶揄されるほど。
果てしないサイレントヒルの街
これも諸刃の刃ですね。歩き回ることで街の異質な雰囲気にどっぷり浸ることができます。しかし早解きを求めるプレイヤー、そもそも雰囲気に興味がないプレイヤーには、街の冗長さは苦痛でしょう。
戦闘は簡素。主人公ができることは銃を撃ち、武器で殴るだけ。動きは単純で迫力なんてありません。ところがホラーを楽しむにあたってはこの程度で充分なんですね。
まとめ
ストーリー・雰囲気・簡素なプレイ感、これらは初代の時点で出来上がっていました。特に雰囲気はシリーズが重ねられても変わらず、恐怖の芯であり続けています。
SILENT HILL 2
2001年、プラットフォームをプレイステーション2に移して続編が出されました。今作でも舞台はSHの街ですが、登場人物はガラリと変化しています。
初代SHが終わってなお街をむしばむ悪夢。これは街自体が呪われて、そういう不思議な場所になってしまったからですね。つまりこれからは初代SHの話がなくても悪夢を展開することができる。実際、SH2に前作との繋がりはありません。
今作の特徴は重厚なストーリー。罪と罰、トラウマやコンプレックス、これらを抱くキャラがそれぞれに動き絡み合っていく。ストーリーをすぐに理解するのは難しいですが、その分の陶酔感があります。
ゲーム面ではSHの街並みがより緻密になりました。街一つを再現しかねない勢いです。没入しやすい一方でマラソンゲーを加速させてもいます。序盤からとにかく歩き回らなければならない。
グラフィックは前作のような容赦ない嫌悪・不潔感がマイルドに。音楽もノイズミュージックではなくなり、メロディアスなものが目立ちます。そうした音楽が、重厚なストーリーを盛り上げていきます。
さらに特徴として、レッド・ピラミッドシングと呼ばれるクリ―チャーが登場。見た目、行動ともに非常にインパクトが強かったため大人気に。血まみれのナースと合わせて、以降SHの看板として扱われていきました。
右:主人公のジェイムス・サンダーランド
左:レッド・ピラミッドシング
初代SHの時点でストーリーを重視する向きがありましたが、SH2でその路線が明確になったように思われます。物語としてのSHがさらなる広がりをみせるわけです。
SILENT HILL 3
2003年にプレイステーション2で発売。SH2で一度は無関係のストーリーが展開されるも、今作で再び初代SHの流れに戻ります。そのためゲーム全体に初代SHで見られた嫌悪・不潔感が復活していますね。
今作は初代SHのキーパーソンであるシェリルが成長し、名前を変えたヘザーが主人公(厳密には成長ではない)。若い女の子が主人公のホラーアドベンチャー。もうこれだけで今作の価値の高さがお分かりいただけるでしょう。
大抵のホラーアドベンチャーは、何かを調べたときどんな文章が表示されるか? 「鍵がかかっているようだ」「何かをはめる穴が空いている」「血だ・・・」という風に、簡素な独白文です。
今作は年頃のヘザー視点なので「鍵がかかっている。さいあく・・・」「何かをはめる穴が空いている。へんな形」「血だ・・・気持ち悪い」という感じの独白文を味わうことができます。軽かったり、一言多かったり。
プレイ感では、過去作より複雑なマップが増えてマラソン感が薄れました。そして裏世界の不気味さはシリーズ随一でしょう。血と錆びのコンセプトを忠実に表現して、一部のステージは真っ赤っ赤だわ床壁が蠢いているわ。
経験者トラウマのとある小部屋
初代SHにケリをつけたので、今作でひとまずシリーズの区切りがついたと言えます。ですがSHの街が滅んだわけではありません。
以降のタイトル
SHシリーズは以降もタイトルを重ねます。
4作目"SILENT HILL 4 THE ROOM"
5作目"SILENT HILL ZERO"
6作目"SILENT HILL:HOMECOMING"
7作目"SILENT HILL -SHATTERED MEMORIES-"
8作目"SILENT HILL: DOWNPOUR"
9作目"SILENT HILL: BOOK OF MEMORIES"
システムを大幅に変えたり、リメイクを行ったり、あの手この手。しかし努力の甲斐はむなしく人気にかげりが見えてきます。少なくとも日本のゲームシーンで、名前が大々的に扱われることはなくなりました。
ただアメリカでは人気が根強い。5作目から海外市場を中心に据えられた点からもうかがえます。なんとコミカライズもシリーズを重ねているとか。日本発のゲームが気がつけばアメリカに籍を置いていた……喜べばよいのか嘆けばよいのか。
SILENT HILL DOWNPOUR ANNE'S STORY
アメコミ最新刊(らしい)
私はアメリカで人気が続いているのも納得できます。ホラー・スプラッタ作品には目がない国ですからね。ある意味では収まるべきところに収まったと言えるのでは?
結論
SHはその世界観が斬新なホラーゲームです。人を怖がらせる点で容赦や情緒はありません。なんといっても、設定からして悪意に満ちているものだから、容赦がなくて当然でしょう。
強烈なホラーがコアなファンを育みSHはさらなる発展を見せていきます。というのも映画が作られているんですね。Part1はここで終了しますが、次パートから映画版SHに触れていきましょう。
ではさようなら。
[Part2 映画版SH]
http://kansomolashi.blogspot.jp/2014/07/part2.html
[Part3 映画版SH2作目]
http://kansomolashi.blogspot.jp/2014/07/part3.html
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