邦題『スペース・ジャム』
吹き替え版を観た感想と紹介を記す
劇場ポスター
あのプロバスケットボール選手のマイケル・ジョーダンと、カートゥーンアニメ大御所のルーニーテューンズが共演!?
マイケル・ジョーダン
ルーニーテューンズ
わーすげえ映画だぞ……と思った方、その感覚に間違いはありません。今作はすげえ映画です。良くも悪くも。内容はゴージャズながら作風がちょいと難あり。覚悟して挑まねばならない映画の一つでしょう。
ピンとこなかった人に説明すると、今作は実写とアニメーションを組み合わせた映像が繰り広げられます。似た映画はマスク、ロジャー・ラビットなど。特にアニメキャラと実写俳優が肩を並べるあたり、ロジャー・ラビットと同じ作風といってよいでしょう。
バッグス歓迎のキス
ジョーダン以外、背景含めてアニメーション
物語をおおざっぱに説明。
宇宙人「テーマパークに新しい刺激が欲しいなあ。ルーニーテューンズを捕まえるか」
バッグス「バスケで勝負しようぜ」
宇宙人「NBA選手の才能をうばってパワーアップ! これで勝てる!」
バッグス「やべえジョーダンに助けてもらおう」
ジョーダン「相手が強くても諦めず戦えば勝てる」
勝利、めでたしめでたし
物語に語るところはないので終わり。以降は個人的に今作から感じた[良い点/悪い点]を挙げていきます。まずは悪い点から。
悪い点
1.しつこいOP
OPは一見するとカッコいい。ジョーダンが実際の試合で活躍していたシーンが切り貼り編集された映像ですね。ずっとジョーダンしか映りません。「あれ、これ何の映画だ?」と不安になるほどジョーダンしか映りません。
ジョーダンは主役だからこれで問題はないのかも。しかし妙に長い。まるでジョーダンのPVを見せられている気分にさせられる。ルーニーとジョーダン、交互に映像を映していくとか、そんな作りにはできなかったんですかね……?
ルーニーも今作の主役ではあるけど、出演シーンまで溜めを作っておこうという魂胆だったのかも。実際、私もルーニーが来るまで「おい、のっぽの男なんていいからルーニー出せよ。ルーニーが見たいんだよ。……ああーきたきたきた!」という感じでした。
2.宇宙人の動機
宇宙人のテーマパーク支配人が今作の悪役です。支配人はルーニーの映像を見て、テーマパークには彼らが必要なんだと気付く。支配人のいる部屋に大量のブラウン管TVがあり、そこに大量に映しだされるルーニーの映像。
「これを求めてたんだルーニーを!」と支配人。まさにこの映画にはルーニーが必要不可欠だと言わんばかり。ジョーダンまみれのOPといい、自画自賛の空気が隠しきれていませんね。苦笑い。
3.ウェイン・ナイト
実写俳優、小太りの彼のことはジュラシック・パークで顔を知っている方も多いでしょう。今作の彼はジョーダンの付き添い役で、とにかく世話焼きっぷりが気持ち悪いのなんの。ホモっぽくさえ感じられます。
ルーニー側にダフィーがいるように、実写側のウザキャラという立場なんでしょう。そう捉えれば少しは我慢できるかな。けど最初から最後まで出てくるんですよ。好きになれません。
左:ウェインナイト(Wayne Knight)
4.チープなVFX
作中のあちこちに出てくるデジタル処理の演出やグラフィック。正直な話、時代を鑑みれば目くじらをたてるほどチープではありません。ただアニメーションの気合いの入り方が尋常ではないため、見劣りしちゃいますね。
一つ言っておくと、実写映像にアニメーションを合成させている時点でVFXですね。ここでは、その実写・アニメーション合成へさらに加えられた演出をVFXと呼ぶことにしましょう。
実写・アニメーション、そしてVFX……この3本柱が入り乱れるシーンは一目で分かります。実写・アニメーションの合成という、ただでさえ人を選ぶ画面構成に、褒めがたいVFXが混ざってくるともう見てられない。
宇宙人の宇宙船が現実世界を飛び回るシーンとか、ジョーダンがバスケボールにされて投げ回されるシーンとか……
ああ、やめてくれ。もういいよ、VFX君は頑張んなくていいよ、アニメちゃんがいっぱい頑張ってるんだからさ……ああダメダメ……勘弁してくれ……
右上:CGで描かれた宇宙船
映像で見ればちょっとチープ
ボールにされるジョーダン
メッセージとかどうとか……こういうツッコミは好きじゃないんですが、今作に限っては解禁します。今作、髪の毛からつま先に至るまで何一つメッセージ性がありません。
例えばジョーダンとバッグスがバスケで共演して、ジョーダンがスポーツに対して大事な気持ちに気付かされる。なーんて要素はありません。当然ジョーダン以外の出演者も同じ。またストーリーも、我々に何かを気付かせてくれる要素は持っていません。
幸い、今作はメッセージ性なんてなくても成り立っています。何も考えずに見ろと、映画自体が口を酸っぱくして言ってくれているわけです。
6.実写×アニメの構成そのもの
これは、褒めどころがない。映像表現としては面白いですね。ただ、それだけ。こんな表現がありがたがられた時代もあったんですねえ。今作は映像の歴史資料ですよ。
悪い点結論
私としては企画そのものが間違ってたんじゃねえのと言いたい。元々はナイキがシューズ宣伝のため、テレビCMでジョーダン×ルーニーを打ち出していたようです。その企画が拡大してしまってこんな有り様を。何事もやりすぎは良くない。
……とはいえ、信じられないほどダメな映画でもありません。ここに挙げた悪い点は、ある程度は目をつむることができるでしょう。というわけで一つ寛容になって、良い点を挙げていこうではありませんか。
良い点
1.超絶アニメーション
これは文句なしですね。ルーニーでおなじみバッグス・バニー、ダフィー・ダック、その他もろもろ。みんなよく動きます。ルーニー特有のキレがあっていかにもカートゥーンな動きが、滑らかに表情豊かに描かれる。
しかしこの豪華さが弊害をもたらしています。キャラたちはカートゥーン定番のギャグを披露してくれますが、なぜか見ていて寒い。ルーニー本編でも見かけるようなギャグなのに、なぜこんなに寒いんでしょう。
問題は前述したアニメの豪華さ。そもそもルーニーのギャグって過激で笑えるけど、高尚なものではない。こんな豪華な作りでそのギャグをやられても、しっくりこない、「どうだ豪華だろう?」とカッコつけている感じが気に入らない。
この感じは言葉で説明しがたいですね。映画版トランスフォーマーの超絶CGオプティマスが漫才をしはじめたとしたら? しかも画面にむかって「面白いだろ?」と言ってきたら? 恐らく、今作と同じ印象を受けるでしょう。
またキャラたちはいつも通りハチャメチャな行動言動を発揮しますが、これもやはり豪華さの弊害から逃げられていない。ハチャメチャな行動言動が、アニメの技術を見せびらかすために使われているように見えてしまう。
さて、散々悪口を言いましたが、今作における超絶アニメーションは一見の価値があります。「おおっ」と目を見張るシーンがいくつも出てきますからね。
2.吹き替え
今作は前述したとおり実写×アニメ。2つの次元の間に横たわる溝は、残念ながら埋めることができていません。クスリをキメたかのようなアニメキャラに、普通の演技をしている俳優たち。この剥離っぷりに、我々受け手は耐えなければならないのです。
しかし日本語吹き替えならば、吹き替え俳優によって俳優やアニメキャラの区別なくイメージが統一され、演技の剥離っぷりをある程度はカバーしてくれます。
とはいえ、ジョーダン演じる山寺宏一の演技がかなり大人しいのは気になります。その声を聴いただけで元の演技がいかなるものだったか、想像できるではありませんか。……いつか吹き替えなしも見ないと。
日本語吹き替えだけの特権といえば、吹き替えルーニーでおなじみ、英語文章を解説する役の梅津秀行の声も聞けます。声あてシーンはごくわずかですが、彼の落ちついた声を聞けただけで吹き替えでよかったなあと感じました。
3.ローラ・バニー
彼女は、最高です
仮に今作の総評が-100点だとしましょう。そこにローラーが加わると+100点にしてくれます。彼女は今作中で、ジョーダンより、バッグスより、有意義な存在といっても過言ではありません。
今作オリジナルのアニメキャラで、ウサギの女の子。映画の40分あたりに登場し、一目みれば彼女が今作のヒロイン・お色気枠だと分かります。まずスタイルが抜群ですね。引き締まった体つきに、主張する胸。身のこなしも他のアニメキャラと一線を画するしなやかさ。
ウサギ特有の長い耳、これが垂れている姿は信じられないほど色っぽい。耳一つでここまで色気を再現できるんですね。また表情ではツンとした態度をみせつつ、媚びた表情をみせつつ、どちらも魅力的。
終盤、瀕死のバッグスによりそうローラ、このシーンでみせるローラの足はたまりません。画面から弾力さえ感じられる。そして70分あたりでバスケットボールを操るローラの動きといったら……ポールダンスやストリップよりも劣情を高ぶらせてきます。
セクシー垂れ耳
カワイイ&カッコいい
褒めまくり。もちろんローラにも問題はあります。彼女は映画のためだけに作られたキャラ。それまでルーニーに登場したことがありません。そんなキャラがルーニーの看板であるバッグスの恋人役を務めだす。
バッグスとローラ 終盤で恋仲になる
「パッと出の癖に、ふざけんなよアバズレが!」と叫んだルーニーファンが少なからずいたはず。しかもストーリーにまったく関わってきません。彼女の役割はどこからどう見ても、セックスシンボルでしかないのです。
……けど、そんなの関係ないもんね! かわいいは正義! ローラ・バニーは今作の誰よりもかわいい。これだけで充分!
結論
今作は超絶アニメーションで動く、美しすぎるローラ・バニーを見るための映画です。ローラ以外のものは何も気にしなくてよろしい。唯一の問題点は、ローラが上映40分は経たないと現れないこと。40分の辛抱ですよ、みなさん。
あと全編約90分。サクッと観ることができます。マジな話、マクドナルドのチーズバーガーみたいなこってりギャグ映画をお求めなら、今作は候補に入ってくれるかと。ギャグの冴えは、そりゃ本家ルーニーには負けますが、寛容にいきましょ。
まだ見ぬケモノキャラを味わいたい人は今作を観てみましょう。もう既に体験済みの人は、もう一度観てみましょう。それではさようなら。
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