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劇場ポスター
まずは観たきっかけについて話します。母親が俳優伊藤英明目当てで前売り券を買い、私はそのおこぼれに預かりました。つまり「まったく興味がなかった」
結論からいえば、そこそこ楽しめました。俳優、監督、さらにいえばこの手の邦画にあまり興味がなかった私とはいえです。ただし手放しには喜んでやりませんよ。
映画公開日が2014年5月10日、今記事発表のほんの2ヶ月前です。というわけで今記事ではできるだけネタバレに配慮していきましょう。
俳優について
まずは主要な登場人物を見てみましょう
平野勇気(ヒラノユウキ) [染谷将太]:主人公
飯田与喜(イイダヨキ) [伊藤英明]:主人公の師匠っぽい役回り
石井直紀(イシイナオキ) [長澤まさみ]:ヒロイン
主人公の平野勇気は、一言でいうと「ウザい」。彼はいかにも現代の若者といった性格、態度をみせます。へえこらして、なよなよして、そこらの大学にいけば腐るほど見かけますね。
若者の描かれ方ではリアルな方ではないでしょうか。私としては同族嫌悪な部分もちょこっと感じますね。とはいえリアルさが、常に素晴らしさに繋がるとは限りません。ともかくウザいの一言に尽きます。
笑顔の平野勇気君
そんな主人公の師匠で、林業のアレコレを教えていくのが飯田与喜。超がつくほど頑固おやじで、叫ぶシーンが多い。なよっとした勇気君をしょっちゅう叱りつけます、主に仕事の面で。彼のなよっとした態度も叱ってほしかったなあ。
与喜で印象的なシーンといえば、やはり序盤。「山を舐めると怪我するぞ!」と勇気君を大激怒するところ。迫力がありますよ。ただそれ以降を見るにつれ、だんだん首をかしげたくなっていきました。
「山を舐めると怪我するぞ」と言った割にね、あきらかに怪我や事故を誘うような行動をたびたび見せる。おいおい、言ってることとやってることが矛盾してるぞ。もし勇気君が山で不幸な事故にあうとしたら、きっと彼が原因になるでしょうね。
そういった矛盾にも思えるシーンは、彼のずぼらさ頑固さを表現するためのものでしょうね。ただもうちょっと映し方を工夫したり、いっそ他のキャラにシーンをゆずってあげたら? そんなわけで与喜がエセ職人気質であることは分かりました。その点に目をつむれば悪くない人物。
与喜の半分はしかめ面シーン
最後にヒロインの石井直紀。勇気君と同世代なのでしょうが、田舎育ちで性格はまるで違います。しっかり者で、バイクを乗りこなす剛毅さもある。
きちんとヒロインこなしています。勝気な雰囲気がありつつも、ツンツンしすぎていないのがよい。ただ勇気君や与喜に比べるとちょぉぉぉぉっと印象が薄いかな。
笑顔以外が似合うヒロイン
他にも登場人物はたくさんいますが、ここでは説明しません。知りたい人は映画館に行くなり円盤レンタルが始まるまで待つなりしてください。次いきましょ。
ストーリーについて
ストーリーは「林業を軸に田舎の生活・風習を描きつつ主人公の青春を追う」です。監督が矢口史靖なので、全編すっきりしたコメディ調で進んでいく。矢口史靖といえば『ウォーターボーイズ』『スウィングガールズ』が有名。
けど私はそうした作品ほど笑えませんでした。大きな理由としては、やはり主人公のウザさが挙げられます。主人公はボケ役でありツッコミ役でもある、ギャグあるところに主人公あり。だから主人公を受け入れられないと、寒い。
とはいえ、笑えると思いますよ。矢口史靖特有の押しつけがましくない小粋で気持ちいいギャグは、たぶん今作でも健在です。映画館で他のお客さんも、笑いどころではクスクスしていました。うちの母親もね。
たぶん笑えます、たぶんね。私はほら、勇気君にばっかり目がいっていましたから……もちろん、悪い意味で。
勇気君のことばかり話題にしていますが、彼のストーリー自体は文句ありません。初めは半身半疑で林業に手を出し、やっぱりキツい仕事だわ田舎に馴染めないわでやめちゃおうかなと葛藤しつつ、いくつか意地があって続ける。
続けているうちに慣れて楽しさに気付く。最終的に林業を仕事にしていくのかどうか……という決断についても納得できる終わり方でした。
話は変わって物語の中盤、色々あって勇気君が森の神様だか精霊だか、よく分からないモノに出会うシーンがあります。これは一瞬ですが、それまで超常現象にまつわるシーンがなかったので唐突な感じを受けました。
伏線はきちんとありました。けどそれらは現実の一側面として映されていました。伏線を見て「幽霊でも出てくるかな?」と、私だって面白半分に考えましたが、あくまで面白半分。いざ出されると「……マジで?」という感じ。
あーさすがに気にしすぎですね。粗探しモードになりすぎるのはよくない。
物語の終盤、勇気君がふんどし一丁でとある祭りに参加します。その祭りで勇気君と与喜はわけあって、巨大な木を切るため二人一組で巨大ノコギリを引くことに。ふんどし一丁で……二人とも笑顔で……右に左に、右に左に……
なんというか、このシーン、ホモっぽい。いやいやそんなわけ! ……そんなわけ?
ちょっと待ってよ。なぜ勇気君は終始なよなよしていたんだ。実は勇気君はヒロインとしての側面をもっていた? それが彼から主人公らしさ男らしさを奪っていた? お相手は与喜だった?
そう考えると、様々なシーンの真相が分かってくるぞ。勇気君と与喜の険呑な出会い……勇気君は最初は「嫌な奴」と思っていたけど……共に過ごすうちに与喜の頼もしさ、カッコよさに気付き……そして共同作業をするほどに至り……
最後にはなんと、抱き合う!? 今作は勇気君と与喜の恋愛を描いた話だったんだ! そういえば矢口史靖は『ウォーターボーイズ』でオカマキャラの男の子を出していたっけ……もう言い逃れできないぞ!
2人の仲は深まっていく……
演出などについて
カメラワークや演出などは基本的にそつのない出来。
今作は田舎が舞台なので、画面を占める色彩は緑や茶色のナチュラルカラーが圧倒的。悪くないですね。目に心地よいシーンがたっぷり。かといって迫力がないわけではない。木を切り倒すシーンは画面映えしています。
緑・緑・緑
序盤と終盤で、特殊なカメラワークが盛り込まれています。勇気君を文字通りカメラの中心に据えて歩く姿を撮っていく。ほら、TVで芸人がバンジージャンプをする際に、表情を映し続けるアレ、あんな感じ。
特徴的なシーン。俳優の演技してますって感じのぎこちない歩き方を見ていると、こういうシーンを撮影する難しさがしのばれますね。といいつつマジな話、このシーンは勇気君の大事な心理描写でもあるので、できれば真面目に観てあげましょう。
終盤、祭りに参加する男たちを映すシーン。男たちが肩を並べてスロー再生で歩いてくるのは『アルマゲドン』などでおなじみのあの演出方法。それまでほんわかしていた中で唐突なシリアス描写、素直に笑いそうになりました。オススメ。
また終盤、祭りのラストで勇気君はちょっとしたアクションシーンに見舞われます。けっこう激しいシーンだったので、一部ではさすがに人形が使われ……え、人形!? はい、紛うことなき人形です。プルプル動いていました。
この人形、シーンの激しさが目を惑わすとはいえ、誤魔化されている様子がない。こんなに分かりやすい人形を2014年の映画で見ることができるとは、感動さえ覚えますね。CGモデルを使うとか、合成するとか、そういう選択肢はなかったようです。
笑うべきなのかな?
結論
今作はスッキリしたコメディを味わいながら林業の厳しさ楽しさ、田舎あるあるを楽しんでいく映画です。田舎の陰湿・排他的な場面を映すシーンは少々ありますが、心臓に悪くない程度に薄められているのでご安心を。
主人公なよなよ問題はありますが、これさえ受け入れられたら他に怖いものはありません。伊藤英明はカッコイイ、長澤まさみはたくましカワイイ。他にも小粒で味のある俳優たちを見ることができます。
けど、主人公はマジでどうにかならなかったの? あのなよなよっぷりが最初から最後まで続く。しっかりしてほしい場面でもそんな醜態だから、視線を奪われますね。「そういうキャラだから」と諦めつつ、やっぱり気になるものは気になります。
まあ、しょせんは個人の問題ですね。ノーラン版バットマンの超ダミ声を好きな人がいれば嫌いな人がいるのと同じ(私は好き)。だから鬼の首を取ったかのように突っつくべき部分ではないかもしれません。
終わりましょう。
私、もしこれを見返す機会に出会ったら、勇気君と与喜に全力で注目したいと思います。理由? もう言いましたよね? ではさようなら。余談ですが原作小説『神去なあなあ日常』は未読。
[WOOD JOB!(ウッジョブ) ~神去なあなあ日常~ 公式HP]
http://www.woodjob.jp/
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