ゲームについて知識があること前提の記事。
東方Projectで語るべき部分は数多あります。ここではSTGの面から語っていきます。STG以外での話はほとんどしませんので、それを踏まえた上でご覧下さい。
今回の主役 東方紅魔郷のスクリーンショット
用語の使い方
[STG]
シューティングゲームの略称。特に2DスクロールSTGのことを指す
この場ではFPSやフライトシミュレーターは除く
例:スペースインベーダー ゼビウス 等
[自機]
「自分の機体」の略称。STGにおけるプレイアブルキャラのこと
[弾幕STG]
STG派生ジャンルの一つ。大量の敵弾(弾幕)をかいくぐるSTG
例:怒首領蜂 式神の城 東方Project 等
[弾消しSTG]
弾幕STG派生ジャンルの一つ。弾幕を消すシステムが根幹にあるSTG
*私が勝手に用いている言葉
例:怒首領蜂大復活 ギガウィングス バレットソウル 等
では本題。
東方は弾幕STGとして実に優れていると、私は思います。同人STGのみならず、商業の弾幕STGも含めての話です。なぜ優れているのか、理由はいくつかありますが、もっとも大きいのは「ZUNの作るゲームシステムが面白い」からに他なりません。ここでは3つの要素を語っていきます。
喰らいボムについて
まずは"喰らいボム"について。
喰らいボム、これは"東方紅魔郷"から導入された一種の初心者救済システムです。そもそも、弾幕STGの基本システムとしてボムがあります。これは強烈な弾幕から逃れるため、場をリセットする消費アイテムですね。無理やりRPGで例えると、FFのエリクサーみたいなものです。
ボムは自機に依存したシステムなので、自機が生きている間しか使えません。被弾しそうなとき使おうとしても、間に合わず被弾してしまえば発動するわけがない。この被弾しそうな際の、ボムを使うか使わないかという判断が、弾幕STGの醍醐味の一つ。同時にシビアな点でもあります。
これは怒首領蜂大復活のスクリーンショット
ボムで弾を消す? それとも避ける?
このシビアさ、ほんの少しやさしくなってくれたらなあ。東方の喰らいボムはそんな期待に応えてくれます。喰らいボムは、まさに被弾してしまった瞬間に発動するシステムで、被弾後にほんの数フレーム、ボムを使える猶予が生まれます。ここでボムを使うことができれば、被弾は帳消しになる。またもRPGに例えるなら、MOTHER2のライフカウンターシステムを思い出しますね。
「おいおい、ちょっとやさしすぎじゃない?」
と思う人はいるでしょう。確かにこの喰らいボムは、難易度を低下させる一因です。しかし重要なのは、救済システムとして優れている点です。喰らいボムは結局のところ、プレイヤー自身が被弾に反応しなければなりません。ぼうっとしているときに、喰らいボムを使える人はまずいないでしょう。これが強く発揮されるのは、
プレイヤーが集中している場面
被弾した経験がある場面
ボムを使ったことがある場面
ようするに、危険だとあらかじめ分かっている場面です。プレイヤーの経験や知識によって活きてくる、ゲームシステムの理想形ですね。しかもプレイヤー自身による行動ですから、成功したときの「乗りきった感」は大きい。
意外にも喰らいボムは、東方にしか採用されていません(たぶん)。とはいえ似たようなシステムに、オートボムというものが存在します。その名の通り、オートで発動するボムです。被弾したら即座にボムが発動して、ミスが帳消しになります。言葉だけだと、こっちのほうが救済システムとして優れているような感じがしますね。
しかしオートボムには大きな欠点があります。プレイヤーの意志と関係なく発動する点です。弾幕を避けているときにオートボムが発動したときの脱力感といったら「ああ、さっきの当たっちゃったんだ……」救済は嬉しいけど、ヤル気なくなります。
喰らいボムは、あくまでプレイヤーの意志で発動するものです。実はそこが大事な面なんですね。やっぱりゲームは、できる限り自分の思い通りに動かしたいじゃないですか。喰らいボムはその点で絶妙なシステムといえます。
(余談。オートボムを採用しているSTGに、上にも挙げた怒首領蜂大復活があります。実は大復活ではオートボムのON/OFFを設定できます。ありがたいですね)
スペルカードシステムについて
スペルカードシステムは喰らいボム以上に、東方を語る上でかかせません。
STGでは、スコアアタックが大きな人気を博しています。その人気のあまり、スコアアタックのためのSTGが作られることも珍しくありません。実際、最近の弾幕STGのほとんどが、プレイヤーにスコアアタックを行わせるためのシステム構造をしています。
東方のスペルカードも、例にもれずスコアアタック用のシステムとなっています。各面のボスが使う弾幕はスペルカードという形で、一つ一つが明確に区切られています。一つ一つが課題に近い形を伴い、うまく弾幕を避けきれればスコアになります。
他の弾幕STGにおいても弾幕を避けきる行為は、確かに重要です。間接的に高いスコアを得ることにもつながりますが、避けきっただけでスコアが得られるわけではありません。要するに、課題としては非常に曖昧なものだったんですね。
ところがスペルカードは、避けきることが直接的な高スコアにつながる。さらにクリアしたか否かが記録もされる。これらが弾幕をよける意義を生み出している。
苦手なスペルカードはボムで回避してもいい。
↓
その場合、スコアとクリアした記録が得られない。
↓
プレイヤーはできる限り避けようとする。
↓
被弾して、結果的にボムを使う以上の損になる。
……という流れは、東方ではよくあることです。素直にボムを使うべきか、少し頑張ってスペルカードに挑戦してみるか、こんな葛藤がプレイヤーを刺激するわけです。
ところで、スペルカードの優れているところは、もう一つあります。それはある意味で、東方Projectの根幹をなす要素でもあります。
スペルカードという明確な形をもったことで、弾幕というものが目立ってきます。さらに、その弾幕を用いる敵キャラも目立ちます。東方は敵キャラ人気が非常に高いですが、その人気を支えている一つが、スペルカードです。
スペルカードは必殺技みたいなもので、孫悟空のかめはめ波、浦飯幽助の霊丸、そんなものが敵キャラ一人一人に設定されているわけです。おまけにプレイヤー自身がそれを味わうことになる。ワクワクするでしょう?
このようにスペルカードは敵キャラを際立たせる演出効果を合わせ持っています。弾幕を避けさせようとするプレイヤーの積極性を煽りつつ、演出としてもばっちり活躍してみせる。本当に、よくできたシステムです。
(東方で本格的にスコアアタックを目指す場合は話は別。スペルカードをクリアするよりも、それを犠牲に別の方法を用いたほうが、高スコアを目指せる場面が多い。もちろん、別の方法を行える腕があればの話)
東方文花帖について
東方文花帖のパッケージ
東方Projectはスピンオフ作品をいくつか出しており、その一つに"東方文花帖"があります。これこそ、神主のシステム創作パワーの妙とでもいいましょうか。発想の勝利とでもいいましょうか。現状、弾消しSTGの中でもっとも興味深い発展系といえます。
文花帖は他のSTGとは少し違います。他のSTGが面クリア型であることに対して、文花帖は課題クリア型です。弾幕のパターン一つ一つが、スペルカードという一個の課題として提示されている点は、他の東方と変わりません。それらを切り取って一個ずつのステージとしてまとめたのが、このゲームです。
文花帖においてプレイヤーが行えるのは、写真撮影だけ。「ハァ?」と思うかもしれませんが、本当にソレだけ。写真を撮ることで弾幕を消しながら、本当の目的であるベストショットを狙っていく。まさに弾を消すだけのゲーム。他のSTGはおろか、東方Project全体でみても異質。だからこそ面白い。弾消しSTGを発展させると、こんなものが出てくるのだという好事例です。
(スペルカードシステムを切り取ってゲーム化した面で、東方自身の発展系とも言える)
STGはかつて撃つ、避ける、これだけが全てでした。スペースインベーダーがまさにそうです。そして様々な変遷を得て、文花帖に辿り着きました。文花帖は撮る、避ける、これだけが全てです。そういう点で、これも立派なSTGと言えます。
また、文花帖の課題クリア型という点は見逃せませんね。そもそも課題クリア型のSTGが、商業同人問わず非常に稀です。比較的最近のゲームでは"シューティング技能検定"が課題クリア型の形をとっています。
STGは非常にシンプルなゲームジャンルです。ゆえに様々なルールを加えたり取り除いたりできます。なので課題クリア型との相性はバツグンと言ってよいでしょう。
面クリア型STGは一本道をクリアまで休まず進まなければなりません。そのうえ弾幕STGともなると、弾幕一つ一つが苛烈で、集中力をけずられる。ハッキリいって、疲れちゃいます。文花帖は課題クリア型で、疲れた時点でやめることができます。ゲームとして良いか悪いかは別として、嬉しいじゃないですか。
とりあえず、こんなところでしょうか。
ZUNが作る素晴らしいゲームシステムの一端が分かっていただけたかと思います。ZUNは他にも、東方Projectを通じて特徴的なシステムを様々に送り出してきました。中にはつまらないシステムも存在していますが、そんなものは上に挙げたもので清算してしまえます。何倍ものお釣りが返ってくるでしょう。
特に喰らいボムは、非常に感心させられます。なぜ他のSTGがこれを真似しないのか、不思議なほどに優れたシステムです。
ところで、東方新作"弾幕アマノジャク"はどうなるのでしょうか。どうやら新作も、今までにない独特のシステムを採用してくれているみたいで、非常に楽しみですね。
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