2014/04/29

ゲーム探訪『ピンクスゥイーツ』

 題目『ピンクスゥイーツ  ~鋳薔薇それから~』
これについての感想を記す。

XBOX360移植版のパッケージ(右側が今作)


はじめに。
私は今作を1コインクリアしておらず、スコアアタックもしていません。また移植版しかプレイしたことがありません。そういう視点であることに注意してください。


用語の使い方

[STG]
シューティングゲームの略称。特に2DスクロールSTGのことを指す
この場ではFPSやフライトシミュレーターは除く
例:スペースインベーダー ゼビウス 等

[弾幕STG]
STG派生ジャンルの一つ。大量の敵弾(弾幕)をかいくぐるSTG
例:怒首領蜂 式神の城 東方Project 等

[自機]
「自分の機体」の略称。STGにおけるプレイアブルキャラのこと

[ランク]
ゲーム内において、プレイヤーの行動によって移り変わる難易度
例:ダライアスではフルパワーアップ状態だと、ランクが上がり敵の体力が上がる

[エクステンド]
スコア上昇による1UPのこと
無限にエクステンドできるものはエブリエクステンドと呼ぶ

では本題。

音楽のジャンルがめまぐるしいほど細分化しているように、STGのジャンルも細かな分類を行うことができます。その中で、YGWシュー、ガレッガ系、ランクゲーなどと呼ばれているジャンルのSTGがあり、ピンクスゥイーツはそれに当たります。

さて、このピンクスゥイーツ、かなり尖ったゲームです。ゲームイメージ、キャラクター、世界観、システム、どれを取っても既存のSTGとかけ離れています。私は個人的に今作がちょっとだけ、ちょっとだけ好きです。とはいえ、手放しに褒められない部分もあるので、それも込みの感想となります。


ゲームイメージ

ゲームの画像なりプレイ動画なり、なんなら公式HPでもいいです。それを見たときに第一に思い浮かべるのは「ケバいな……」でしょう。全面ピンク系のカラーが基調であり、それはゲーム画面だろうとキャラだろうと徹底しています。まずこの時点でSTGとしては異質ですね。

カラフルなSTG自体は、探せばたくさん出てくるでしょうが、ケバいSTGは中々出てこないはず。今作のピンクカラーは、他のSTGを遊び慣れている自分にとっては、なんともいえず苦笑いを催す雰囲気を放っています。

このピンクカラーは、例えばハローキティやプリキュアや、そういう健康的な雰囲気ではないのです。乱暴な言い方をしますが、AVのパッケージのような、そういう癖というか、悪目立ちな感じがある。まずこの時点で、プレイヤーをふるいにかけてきます。

とはいえ、ゲームをプレイしてみると、ピンクカラーは案外ひかえめで。むしろ明るい雰囲気を盛り上げるのに一役買っています。また、ゲーム中で出てくる機械はいかにもブリキの玩具という感じで、ファンシーさが好印象ですね。ややクドくはありますが。

こんな玩具みたいなのばかり出てくる


キャラクター

今作では自機が4機から選べ、5のパイロットがいます(1機だけ2人乗り)。5人すべてがケバケバしい。当然ボスキャラもケバケバしいですが、やはり注目するべきは主役5人でしょう。なぜなら、声が問題アリだからです。

5人はどうやら、開発元のCAVEの社員が声を当てているようです。それがウソか真かは別として、声を聞けば明らかに違和感が感じられるでしょう。感情の平坦な声、やや滑舌も悪い、どの角度から見ても素人の声ですね。

素人を起用するというのは、悪いことではありません。それにCAVEのSTGでは素人は珍しくない。同社の弾幕STG『虫姫さま』でも主人公に声をあてたのは素人でした。私がここで問題にしたいのは「5人すべてが素人」という点。

ゲームをプレイするために自機を1つ選ばなくてはならない。さて選んでみれば、聞いているこっちが恥ずかしくなる素人声が連発される。なので「ちょっと気持ち悪いな」と別の自機を選んでみる……また素人くさい「まさか全員コレか?」……その通り。

たった1人の素人声を聞かされるのはまだいいですが、5人となると、どうしても耐えがたい。つまり、必ず出てくるんです。ヒイキ目に見ても馴染めそうにない声が。好みの問題ですが、もし今後プレイする方はその点を覚悟してください。

ボスキャラに関しては、素人声という印象は薄いです。正確に言えば、プレイ中に何度も聞く羽目になる自機キャラの声に目がいきすぎて、気にするどころではないと言うべきでしょう。

今にもストリップをかましそうなキャラデザイン


システム

今作のシステムは『サマーカーニバル'92 烈火』というFCで登場したSTGに似ています。というのも、メインプログラマーが同じ人物"矢川忍(やがみしのぶ)"なんですね。前述したYGWシューとは、彼が関わったSTGのことを差した言葉なんです。

システムの特徴的な部分を挙げましょう。
・ロースヒップというオプションがあり、任意に動きのパターンを変えられる
・自機からの通常ショット、ローズヒップからのショットを使い分けられる
・自機のスピードは任意で調整できる
・通常ショットを使わなければローズクラッカーというボムを溜める
 -ローズクラッカーは敵弾を防ぐことができる
 -溜めてからショットボタンを押すと攻撃として使える
・プレイヤーの様々な行動がゲームランクに影響してくる
 -大雑把に言えば何をしても難易度が上がっていく

自機まわりのシステムは独特で非常に面白い。特にローズクラッカーはよいですね。攻撃にも防御にも使える。今作は弾幕STGなので、弾を防ぐものがあるのは心強い。

敵弾のかわしづらい危ない場所にやってきたとき、ローズクラッカーを溜めはじめます。弾を消してくれる、ローズクラッカーは溜まっていく、頃合いを見計らってボン!ローズクラッカーに巻き込まれた敵が爆散していく……ああー気持ちいい……

ローズクラッカー爆発シーン

しかし、今作の肝はなんといってもランクシステムでしょう。ランクシステムは、恐らくSTGの歴史上でもっともシビアなシステムと言ってよいですね。そのシビアさとは、開発者・プレイヤー両方にとって。

これにまつわる細かい話は難易度の項目で。


難易度

今作は高難易度です。その理由は3つ考えられますね。
・敵配置や弾幕などが、単純に難しい
・弾幕の見えづらい箇所が多い
・ランクシステム

第一の理由。
今作は破壊の爽快感を置いている作りであるため、敵が非常に多く登場します。魚群とも言えるほどの敵数は、3面以降から目立ってきます。それらをショットやローズクラッカーで破壊していく気持ちよさは中々のものです。

敵の多さは同時に、難易度を上げてもいます。次から次へと敵が現れ、弾を撃ってくる。敵配置を覚えていたり、覚えていなくとも心構えをしておかないと、あっさり撃墜されてしまうでしょう。しかも敵が多すぎるから、ステージによっては敵自体と衝突してしまうことも珍しくありません。

6面は特に敵の多さと配置のいやらしさが目立ちますね。STGは覚えゲーとはよく言われますが、6面では本当にきちんと敵配置を覚えていないと、あっさり殺されてしまいます。初見プレイでは、あまりにも思いがけないところから出現する敵に、言葉も出ないことでしょう。

実は敵の多さは、もっと厳しい問題を呼び起こしています。敵そのもの、敵の吐き出す弾幕が、見えづらい。これは精密動作を要求するSTGでは致命的な欠点です。

今作はどのステージもカラフルなので、弾幕が敵に隠れてしまうんですね。弾幕が目立つ発光色に分けられていても、周りが極彩色だとあまり効果はありません。さらに敵が多いので、殺し切ったと思っても生き残りの敵がいることに気付けないこともある。それに特攻されたときの不意打ち感といったら……

5面は特に酷い。画面をみていても何が起きているのかまったく分からないし、何に殺されたのかも分からない。もちろん前述したようにローズクラッカーで弾を消すことはできますが、限度があります。そもそもどこから撃たれているのか分からない状態では、盾があっても意味はありません。

(盾があっても場合によっては意味がないというのは、難易度の一環として考えてみると、実は成功していると言ってよいのかな? システムに頼り切らせない作り方)

では3つめの理由、ランクシステムについて話しましょう。

そもそもこのランクシステムは、今作が初出ではありません。同じくYGWシューである、アーケードの『バトルガレッガ』が封切りです。またこのシステムのおかげで、ガレッガはSTG界で一躍有名にもなりました。

ランクはプレイヤーが今作をプレイする限り、常に上がり続けていきます。普通にプレイしているだけでは、どんどん難易度が上昇していき、しまいには手のつけられない状態に陥ってしまう。ランクを下げなければならない。下げる方法はいくつかありますが、もっとも手軽で分かりやすいのが"自機つぶし"

(今作では自機つぶし以外に、もう一つだけ有効なランクを下げる方法があります。スコアアップ用アイテムをわざと取り逃がすこと)

ようするに自殺ですね。マリオでいえばわざとクリボーに当たる、ロックマンでいえばわざと針を踏む。本来ならありえないプレイですが、ランクゲーではこれが必須になってきます。

バトルガレッガでのランクシステムは、とても繊細なバランスで成り立っていました。エブリエクステンドを行うためスコア稼ぎを絡めつつ、適切な位置で自殺していく。これが独特のプレイ感覚を生み、またスコアアタックでも独自の緊張を生みます。

ここで私個人の話になります。私はSTGがそれほど上手ではなく、スコアアタックも好みません。なのでランクシステムの醍醐味というものは、人づての情報でしか知りません。今作をプレイするにあたってもそれは同じでした。

問題は、事前情報としてランクシステムのことを知っていたことにあります。「何をしてもランクが上がり、ゲームが難しくなる」というのは、普通のプレイをしようと努めても、相当なプレッシャーを与えてきます。

「こんなプレイの仕方をして平気かな」という不安が常につきまとってくるのは、気持ち良いものではありません。ランクシステムなんて影響しないくらい貧弱な腕前だったとしても、心はきちんと影響されますからね。

しかも今作は、ランクあるなし以前にゲーム自体が高難易度です。さらにここで、操作の複雑さが悪いスパイスとして効いてくる、難易度や操作が難しいので、ランク調整に挑戦してみようかなあという気持ちを忘れてしまうんです。

ただ正直なところ、ランクシステム周りの細かな部分は、今作をさほどやりこんでいない私には説明しきることができません。熟練プレイヤーによると、ランクシステム及び、それに影響を受ける各種システムによって、様々な問題点があるようです。


その他

他に今作で気になっている点は、ステージ数の多さ。全部で7面あります。弾幕STGの一般的なステージ数が5、6面なので、1面だけ多いですね。この「1面だけ多い」というのが肝でして、プレイしているとかなり疲れてきます。

ゲーム自体が独特で、自機のシステムも特徴的で、高難易度でもある。なので5、6面あたりまでいけば、お腹いっぱいになります。クリアしなくても満足度が得られる、ある意味では優秀なゲームですね。

敵に"スクランブルエッグ"という中ボスがいますが、この扱い方が演出的に面白い。この中ボスは1面で顔をみせ、最後の7面まで登場し続けます。プレイヤーにやられては、次の面で武装を新しくしてリベンジを繰り返す。自然と親近感というか、ライバル意識が沸いてきます「お、またこいつか」

あと敵弾の種類の豊富さも、地味ながら好みです。破壊できる粒の弾、破壊できない粒の弾、剣状の弾、50口径弾のように太いビーム、太くはないがヘニョヘニョ曲がるビーム、数え上げるとキリがありません。ただ、その敵弾の豊富さが、見えにくさに繋がっているのも事実です。

STGにおいてプレイヤーができることは撃つ・避けるのみ、しかも強制スクロール。だからSTGはプレイヤーを飽きさせない演出が非常に重要です。今作は演出をそれなりに意識してくれています。私としてはそれだけで好感触。


アレンジモード

実は今作はXBOX360に移植されています。『むちむちポーク&ピンクスゥイーツ』今作と同じくYGWシューの『むちむちポーク』とセットになった移植です。この移植で特筆するべき点は、専用のアレンジモードの存在でしょう。

アレンジモードでは、自機の性能が大きく変化しています。
・ローズヒップは通常ショットに統合された
・ショットを撃ち続けていてもローズクラッカーが溜まっていく
 -ローズクラッカーの発動は別ボタンで任意に行える
・波動ガンが使える

大雑把にまとめると、オリジナルモードより簡易になり、波動ガンが使えるようになりました。この波動ガンは、今作ピンクスゥイーツの前作にあたる『鋳薔薇』の核となるシステムでした。弾数には限りがありますが、撃てば攻撃判定が長く画面上に残る、攻防ともに非常に強力なものです。

ローズクラッカーという盾がある上に、波動ガンという矛まで手に入れてしまった。アレンジモードの自機はとても強力です。無双の勢いで敵を薙ぎ払っていきます。今作では元から破壊の爽快感に重点が置かれていたので、アレンジモードはそれが際立って感じられます。

ランクシステムに関しては、普通にプレイしているとほとんど感じられないほど緩く設定されていますね。オリジナルモードにあった終始追いつめられている感じがないのは、私としてはとても喜ばしいことです。

また全体的に、露骨にスコアアタックを中心とした作りになっています。そのためちょっと触ってみただけでも、スコアのもりもり上がる手触りがあって、興味がなくても気持ちよい。

私は今作のアレンジモードは大当たりだと思います。マイルドな調整になったかわりに、破壊の爽快感がより明確になり、能天気に楽しめるゲームとしてこの上ない出来栄えを発揮してくれましたから。もちろん、オリジナルモードの職人気質な雰囲気も、嫌いではありません。



結論。
今作は一味違う世界観やシステムを有しています。しかしそれらは受け入れやすさよりも、受け入れづらさを助長してしまっています。癖のないゲームはつまらないものですが、癖がありすぎるのも考えものですね。

もし今作のケバケバしい世界観にピンときて、けどSTGがそれほど上手でない方は、移植版に収録されたアレンジモードをプレイするとよいでしょう。アレンジモードでは、難易度という面での癖が抜け落ちていますから、それなりに楽しめると思います。

[ピンクスゥイーツ 公式HP]
http://www.cave.co.jp/gameonline/pinksweets/

[むちむちポーク&ピンクスゥイーツ 公式HP]
http://www.cave.co.jp/gameonline/Xbox360/muchi-pink/

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